のんびりゲーム記

クリアしたゲームの感想や備忘録。ネタバレ満載です。

15.くまのレストラン

今回はインディーズゲーム、くまのレストランについて書いて行きます。クリア時間は3時間程だったかと思います。

このゲームはiOS/Android向けにアプリとしてリリースされた作品です。2021年6月17日にSwitchで完全版として配信開始され、私はこちらをプレイしました。完全版からの新要素として、後日談エピソードや楽曲の追加があるようです。

私はこの作品を全く知らなかったのですが、Switch版リリースにあたって組まれた特集記事を見て興味を持ち、そのまま予約購入しました。懐かしいドット調のゲーム画面と可愛らしいキャラクター達による優しい世界観の作品なのかと思いきや、どうやら内容はかなりダークかつ感動的なものということで…

 

・まさかすぎる世界観~前半・天国編~

くまのレストランにはコックのくまと記憶喪失のねこがおり、プレイヤーはねこを操作してレストランのお手伝いをします。実はこのレストランがあるのは天国と地獄の境目であり、ここを訪れる客は既に死亡しています。この設定には初っ端から度肝を抜かれました(笑)

メニューの無いこの店では、やって来る客に対してリクエストされたものを何でも振る舞います。客が生前好きだったものや思い出の料理を出すのですが、中にはくまが分からない料理を注文してくる客もいます。そこで登場するのがねこの「ダイブ」という能力で、客の記憶から生前…というか死の直前の光景をのぞき見、客の求める料理の詳細を知ることが出来ます。ほのぼのしたタイトルからこの設定は想像出来ないでしょ…

 

客の死因は事故死や病死、自殺まで様々です。短い回想ですが、それぞれの辿ってきた人生や想いを知ることが出来、そして最期の瞬間を見届けることになります。序盤で既に泣けてしまい、すごいゲームだな…となりました。

この作業を繰り返していると、正体不明だったコックのくまについての話が少しずつ展開されるようになります。くまは生前、最愛の娘の気持ちに気付けず自殺させてしまった過去があり…この父娘を巡る物語がこのゲームの大筋なのですが、この時点ではこれ以上のことは語られずに前半パートのボスである悪魔と対峙する話へと移ります。

 

前半パートは、料理を振る舞ってきた客たちが天国行の電車のホームに集まる場面でエンディングです。天国行の電車があるということは、当然地獄行もあるということ。アプリ版では前半の天国編は無料ですが、ここから先の後半・地獄編は有料だそうです。続きがすごく気になる終わり方なので、これは絶対に買ってしまうわ…上手い商売だなぁ。Switchの完全版には前後編両方が最初から入っているのでそのまま続行しました。

 

・怖すぎる世界観~後半・地獄編~

悪魔との闘いに勝利したくまとねこですが、突然ねこが姿を消してしまいます。消えたねこを取り戻すため、後半パートでは今度はくまを操作します。お気づきの方もいるかもしれませんが、実はねこの正体は生前のくまの娘で、前半で不明のままだった二人の話が紐解かれていきます。

地獄行のホームに向かい、電車に乗ると前半では姿を見なかった人々が登場。この人たちは地獄へ向かう死者なのですが、詐欺師や犯罪者、独裁者といういかにも…という人から子供、看護師といった何故こちらに?という人まで様々なタイプがおりました。ホームで出会った女の子・ドロシーに言われるがまま今度はくまが地獄へ行く人々の記憶にダイブします。

地獄行の電車に乗るだけあって、やはり天国編よりも壮絶なものが多かったです。生前スリだった子供の死因は撲殺、患者に望まれた安楽死を与えるため殺しを続けた看護師は死刑でこの世界に来たとのこと。な、なんという……

 

一通り話を聞き終えると電車から何人かいなくなっています。電車の上に登ってみると、ドロシーが消えた人々を銃で撃っていました。このドロシーは地獄行の人々の魂の選別をし、反省の色を見せない救えない魂を排除する役目を持っているのだそうで。

ここで撃たれた人は地獄へは向かえず、先ほどの子供や看護師など改善の余地ありとの判断された何人かはそのまま地獄へ向かいました。地獄へ向かえた魂は転生が可能ですが、そうでない魂は虚無へと堕ちそのまま消滅してしまうとのこと。いや~~~本当に可愛らしいゲームビジュアルからは想像できないダークな世界観ですよね…

そして、ここである男を撃つか撃たないかの判断がくまに委ねられます。実はこの男、子供の頃にくまの娘をいじめていた張本人でした。大人になっても悪いことを続けていたようで…子供時代の男はくまの娘を学校の屋上に締め出し、そこからの脱出を試みた娘が誤って転落してしまうのが娘の死の真相でした。自殺したわけではなかったんだね。私は結局撃たずに甘いね、と言われドロシーが撃ち終了。

 

地獄に到着しドロシーとも別れ、虚無にいるというねこの元へ向かうため今度はカロンの河を渡ります。船守のカロンさんは明るく陽気な癒しキャラでした(笑)そして虚無を散策し遂にねこを発見するも、消滅しかけていました。

ねこと仲良くなったナイティという名の悪魔が言うには、ねこを助けるにはドロシーから受け取った希望の灯を使い、ねこにダイブをしなくてはなりません。しかし、これを使ってしまうともう元の場所には帰れなくなり、そのまま消滅するしかなくなると…くまはこれは使用しねこの記憶にダイブ、幸せそうな記憶を辿った後徐々に画面は暗くなり二人は共に消滅してエンディングを迎えます。

…まさかのバッドエンド?ということはなく、つづきからを選択するとナイティが登場、話をしていると自分がいなくなっても忘れないでくれるか?と聞いてきます。それに答えると覚悟を決めたと言い笑って消滅し…スタッフロールに突入、そこではくまが以前通りにレストランを営む光景が。ナイティが自分を犠牲にしてくまとねこを助けてくれたのでしょうか、これが真エンドです。

 

短い作品なので描写不足や無理やり感のある点(特にナイティ周り)も多々あり気になったりはしましたが、細かいことを抜きにすると素朴ながらも圧倒的な雰囲気の世界観を楽しむことが出来ました。戦闘や難しい謎解きは無く、小説…というより絵本を読んでいるような感覚で気軽に遊ぶことができ、心が浄化されたような達成感を得られてよかったです。